犬を飼い主より先に歩かせたり、飼い主より先に食事を与えたりすると犬の優位性を助長するため、犬の攻撃的行動を増加させると考えている人がいます。
いわゆる上下関係とか主従関係というやつです。その関係が築けずに、飼い主を噛む、唸る、威嚇するなどの問題行動に発展すると、「アルファ―シンドローム(権勢症候群)と呼んだりします。
1990年代くらいまでの考えだそうです。
しかし、2000年代に入ると、その考えを否定する研究が出てきます。その一つが、犬の攻撃行動を引き出しているのは、犬の優位性の助長ではなく、人側が犬を脅かしている可能性があるということを示唆した研究です。2005年に発表された研究です。
方法:60頭の犬(20 Belgian shepherds, 20 retrievers and 20 sled dogs)に対して、全く初めての女性が2つのパターンで近づいて、その時の犬の反応を比較する。
1つ目は、フレンドリーに犬に近づくパターン(犬に話しかけながら近づいていって最後に優しくなでる)。
2つ目は、脅迫的に犬に近づくパターン(犬に話しかけずに近づいていって最後に犬の目をじっと見つめる)
結果:RetrieverとSled dogs と比較して、Belgian shepherdは、より頻繁に人間の行動に反応し、脅迫的に近づくパターンに対しては回避または攻撃的な行動を示した。
この研究では犬種による差が示されてはいますが、人側の行動が犬に恐怖を与えている可能性があることが理解できると思います。
やっぱり優位性とか主従関係とかは、犬との信頼関係を気づくのに最重要課題ではなさそうです 。
ちゃんと科学的に検証されているのですね。
参考資料:Vas, Judit, József Topál, Márta Gácsi, Ádám Miklósi, and Vilmos Csányi. 2005. A Friend or an Enemy? Dogs’ Reaction to an Unfamiliar Person Showing Behavioural Cues of Threat and Friendliness at Different Times. Applied Animal Behaviour Science 94 (1–2), 99–115.
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