突然ですが、痛みとはなんでしょうか。
国際疼痛学会(IASP)の定義では、"Pain: An unpleasant sensory and emotional experience associated with actual or potential tissue damage, or described in terms of such damage" (組織の実質的あるいは潜在的な障害に伴う、あるいは、そのような障害を表す言葉で表現される不快な感覚あるいは情動体験)と表しています。
「痛み」は主観的な感覚・感情であり、本人が痛いと言えば痛みが存在すると考えられています。
脊椎動物の痛みを感じる経路(痛覚伝道路)としては、侵害受容器(痛みを起こす刺激を受けとるところ)→末梢神経(身体の各部分に存在する神経)→脊髄→脳へと伝達されます。犬や猫を含む全ての脊椎動物は、人と同じ痛みの経路を備えているため、痛みを感じることができます。
よく、「犬は痛みに強いので大丈夫」という話を聞きます。それは勝手な思い込みであり、改めなければならない考えです。日本では「痛みは耐えるもの」という考えがまことしやかに漂ってます。もしかして、この考えを犬や猫にも押し付けてしまっているかもしれません。
言葉でコミュニケーションが取れない犬の「痛み」にどうやって気づいたらいいのでしょうか。犬は痛みを隠しません。「動物のいたみ研究会(動物臨床医学研究所)」では、慢性疼痛に苦しむ犬の「痛み」に飼い主が簡単に発見できるよう、評価基準を作成しています。
みなさんも愛犬の様子と照らし合わせてみてはいかがでしょうか。
ここでイギリスで行われた興味深い研究をご紹介します。
1996年から1997年に実施されたアンケート調査では、犬猫への術後鎮痛薬投の割合がとても低かったそうで、2013年に再度同じようなアンケート調査を実施してみました。720名のペット獣医師から回答がえられました。すると、98%の獣医師が術後にルーチンで鎮痛薬を処方するまでになっていたそうです。著者は、この結果はアニマルウェルフェアの向上に繋がるとしています。
では、日本の状況はどうなんでしょう?
この問題を第2回PD-TENカンファレンス(10/7)で取り上げていきます!
今回のテーマは「犬の運動器疾患と異常行動について考える」です。
我らが入交眞巳先生と酪農学園大学の麻酔科医で痛みのプロフェッショナルの佐野忠士先生をお迎えし、「犬の痛みとリハビリテーション」について皆さんと考えていきたいと思っています!
横須賀でお待ちしてます! 詳しくはホームページを見てね。
J R Hunt, T G Knowles, B D X Lascelles, J C Murrell.Prescription of preoperative analgesics by UK small animal veterinary surgeons in 2013. Vet Rec. 2015 May 9;176(19):493
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25783048/
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