インターネット上にある膨大な情報は、質が低いもの、信頼性に欠くものが多いのが現状です。客観的な根拠の記載がない情報には、注意が必要です。
犬の問題行動に悩んている飼い主さんは、まずはインターネットで情報収集を行う方がほとんどだと思います。今ではスマートフォンも普及し、いつでもどこでも調べることができます。
激しい攻撃行動を示す犬と暮らす飼い主にとっては、一瞬でその行動を治してしまう道具や方法に魅せられてしまいがちです。
では、巷に流れるインターネット情報は信頼できるものか?信頼していいものか?
その問題に挑むため、2020年のある日、5人の研究者たちが集まった!
私たちは、「噛み犬」と「しつけ/トレーニング」をキーワードに検索し、その上位43サイトの内容を精査してみました(何回かやってみて、ダブりは除いだ件数です)。
情報の信頼性について、5つの情報;①著者/監修者、②根拠、③運営者情報、④投稿日、⑤問い合わせ先、が記載されているかどうかを評価しました。すると、提供されているトレーニング内容について、信頼性が高いと判断されたサイトは、全体の42%と半分にも満たない状況でした。特に、情報の根拠が示されていたサイトは、1つだけという状況が示されました。
情報の動物福祉への配慮について、「5つの自由;①飢えや渇きからの自由、②不快からの自由、③痛み・怪我・病気からの自由、④本来の行動がとれる自由、⑤恐怖や苦痛からの自由」と「専門家へのカウンセリング」の記載を評価基準として、トレーニング内容を精査してみました。配慮しているサイトは、全体の37%だけ。特に②不快からの自由や④本来の行動がとれる自由については、全体の27%しか対応されていませんでした。
約7割の情報は、「不快からの自由」や「本来の行動がとれる自由」を考慮していない情報
このような状況は、このブログを読んで下さっているトレーナーさんの現場にも影響を与えているのではないでしょうか?
トレーナーさんが飼い主さんにお話しする内容とインターネットの内容にギャップが生じていたり、インターネット情報を信じて行ったトレーニングがあだになって、犬の攻撃行動が悪化していたり。
1人の飼い主さんが、新しい情報や複雑化する情報を「正しく」判断するには限界があります。私たち犬の専門家は、インターネットで情報を発信する際には、「客観的で根拠に基づく情報提供」を心がける必要があると思います。
本研究には、続きがあります。それは、またいつかの機会に。
PD-TENのカンファレスでは、本研究の著者が詳しく解説します。ぜひご参加ください!
参考資料:
伊藤 かおる, 志賀 保夫, 田中 雅織, 松浦 晶央, 入交 眞巳. 飼い犬の咬傷行動に関するインターネット情報の信頼性. 日本獣医師会雑誌.2022 年 75 巻 2 号 p. e36-e45
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